「どぶろく」と聞いたら何を思い浮かべますか?
私は、なぜか山賊の親分が、とっくり片手に酒盛りをしている場面。何からそんなイメージを持ったのか分からないけど(笑)強くて豪快なお酒という印象を持たれている方も多いのではないでしょうか。しかし、このどぶろく、確かに度数は高いので飲みすぎは注意ですが、甘味があって飲みやすく、女性にも人気のお酒だそうです。
さて、「どぶろく」は、昔は全国各地の農家を中心に、各家庭でも作り飲まれていたそうですが、現在では「酒税法」により、許可なく酒類を製造することは禁じられています。お酒を造るのも売るのも、いろいろと法律の制限があるのですね。
しかし、2002年に、地域経済の活性化を目的に規制緩和が行われ、構造改革特区の一つとして通称「どぶろく特区」の地域では、どぶろくの製造免許の要件が緩和されました。
南丹市も、2013年に「どぶろく特区」(正式には「日本の原風景ふるさと南丹どぶろく特区」)に認定され、どぶろくを作れるようになったのです!
もちろん、特区内で誰でも作れるわけではなく、民宿やレストランなどを営んでいる農家や法人が自ら栽培しているお米で醸造する場合に限り、酒税法の免許要件が緩和されるというものです。
今回は、美山町でどぶろく「たのし」を製造、販売されている民宿みやま 店主 武田英喜さんにお話を伺いました。
さて、今更ですが、どぶろく(濁酒、濁醪)とは?
「どぶろくとは、お米と麹と水に、お酒用の酵母を加え、発酵させたもの。清酒(日本酒)のように、濾したり、絞ったりしないので、お米の粒感も残り、ほんのり甘い風味を感じる独特の味で、とろりとした口当たりの良さも特徴の、白く濁ったお酒です。
清酒とはちがい濾(こ)す作業は無いため、米の粒感もあります。ほんのり甘い風味を感じる独特の味で口当たりの良さも特徴です。」
民宿みやまで作っているどぶろくの特徴は?
「作り方は、地域や製造所によって様々あるようですが、民宿みやまでは、一般的な作り方をベースに、より甘みを引き出すためにもち米で作っています。酵母の種類により微妙に味が変わるため、お米や麹がきれいな色のままお酒になるようにいろいろ試してみて、選りすぐって決めました。また専用冷蔵庫で、発酵具合を管理するため、細やかな温度管理が必要です。どぶろくが出来るまでの時間(期間)は、一般的には10日から2週間程度ですが、季節や気温によって異なり、早く発酵すると酸味がきつくなるので、民宿みやまでは、甘みが感じられ、口当たりがいいように低温でゆっくり発酵させ、アルコール度8~10度に仕上げています。」
どぶろくを作り始めたきっかけは?
武田さんは、若いころ、美山のお米で焼酎が作れないか?と考えた時期があったそうです。いろいろと調べてみたところ、お酒を製造する基準を満たすには、大掛かりな醸造所をつくる必要があったため、断念したとのこと。そんななか、南丹市がどぶろく特区の指定を受けたことを知り、改めて、酒造りをやってみようと思って、説明会に参加したことがきっかけとなりました。
お薦めの飲み方は?・どんな肴にあう?
「どぶろくは「食べるお酒」とも言われています。濾してないから、麹が残っており、甘味があり飲みやすいので、女性にもお薦めです。どぶろく=おじさんのイメージではなく、食後のスィーツ感覚で、また、炭酸割りや食前酒にもピッタリですよ。飲み方はいろいろありますね。また、麹菌はお肌にも良いと言われています。麹を使って作っているので、同様に麹で作っている味噌味のおかずに合うと思います。」と武田さん。
まさに味噌味の牡丹鍋にピッタリ。ただ、食べるお酒なので、ちょっとおなかが膨れるかも?また、アルコール度は8~10度なので、口当たりがよく、呑みすぎるとかなり酔っぱらうかも?
美山のどぶろくが美味しい訳は?
「きれいな水 美味しいお米 材料の品質はピカイチ!それが何より美味しさの素。現在町内で3人が杜氏としてどぶろくを作っていますが、みんな丁寧に作ってます。互いに、情報交換し切磋琢磨して、美味しいどぶろくづくりを目指しています。飲み比べると少しずつ違いがありますが、3人とも丁寧な仕上げを心がけています。それが真の美味しさと品質の向上につながると信じています。」と話された言葉が、力強く響きました。
「たのし」の名前に込めた思いは?
「集って たのし 呑んで たのし」と、 どぶろくを中心に、みんなが集って楽しい場所になるようにとのの想いを込めて名付けたとのこと。「たのし」は「喜」と書くそうで、杜氏武田英喜さんの名前の一字でもある。
さてさてお味は?
武田さんにいただいたどぶろく「たのし」をグラスに注ぎました。ほんのり甘い香りが漂いました。米粒が細かく注ぎやすいです。
米粒の感触を楽しみながら飲め、口当たりは確かに甘酒のようで飲みやすいです。
実は、お酒はあまり強くない私ですが、いろいろ試しながらたのしくいただきました。ちょっぴりほろ酔いで、いい気分になれます。
どぶろくにはどんな器やグラスが似合うのかしら?それを選びながら飲むのも楽しみでした。
もっと広がれ 美山のどぶろく
先日、美山どぶろく「たのし」の蔵元看板が完成しました。民宿みやまの玄関に飾られています。材料選びからデザイン、仕上げまでこだわって作成された看板です。
カッコよく重みを感じられます。
武田さんは「今後の望みは、美山でどぶろくの蔵元が増えて、こういった看板が少し目立つようになればいいのになあ。ふるさと祭なんかで、どぶろく新米酒コーナー(祭り)ができるようになればなあと思います。」と夢は膨らみます。
パッケージデザインやチラシの作成などは地域おこし協力隊をはじめ、多くの人に関わってもらって、どぶろく「たのし」が生まれました。このどぶろくを中心にして、ますます人の輪と和が繋がっていくといいなと願いながら作っていきます。」
和やかにお話を聞かせていただいた武田さん、「いつでも、いくらでもどぶろくの話をしますよ!」とおっしゃっています。
ぜひ一度呑んでみて、民宿みやまで「どぶろく談義」はいかがですか?
また、その他の美山のどぶろくもぜひ呑み比べてみてくださいね
民宿みやまホームページ
美山のどぶろくを売っているところ
美山自然文化村 河鹿荘
ふらっと美山
※民宿みやまの「たのし」が、2022年 第15回全国どぶろく研究大会コンテスト 淡麗の部にて優秀賞を受賞!
文:下伊豆かおり